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2017-05-11

出稼ぎ帰りの晴れ姿

冷蔵庫です。飛行機に乗せてきたのです。
いつ見ても不思議なんですが、こんなでっかいのを預けて、一体いくらエクセス・チャージを払ったんでしょう・・・

この3月、コロンボ空港に降り立ち、携帯のSIMを買おうとうろうろしていたとき見かけた光景です。
思わず、「立派な冷蔵庫ねぇ!」と話しかけて、少し立ち話し。
予想通り、彼女は中東での出稼ぎから戻ったところでした。

スリランカでも、立派な冷蔵庫は買えるのです。
余分なお金を払って飛行機に乗せなくても・・・と思うのですが、空港の到着ゲートを出てくる時に、迎えに来た親族が見守る中、この大きな冷蔵庫をしずしずと押して出てくるっていうのがとにかく重要なんでしょうね。

出稼ぎ先が中東の場合、仕事といえば、女性ならハウスメイド、男性ならタクシードライバーのことが多い。
この晴れ姿のために、異国で何年も頑張って働いてきたに違いありません。ある意味、彼女の人生のハイライトなのです。お母さんや親戚のお姉さんたちが、そうやって帰国するのを見て、憧れて育ったかもしれません。

2001年頃のこと。
コロンボに駐在していた私は、ある日、日本から来るお客さんを迎えに空港に行きました。
到着ゲートで待っていると、たまげたことに、1本、また1本、列をなして大型の冷蔵庫が出てくるではありませんか。
カートを押してくるのは、もちろん、出稼ぎ帰りの女性たち。たしかクウェートからの飛行機だったと思います。

当時の職場の同僚も、3人のうち2人は中東出稼ぎ経験者でした。年齢は私と変わらなかったから、1970年代生まれの20代後半。

1人は、出稼ぎのお金で家を建て、新築祝いに職場の全員を招いてくれました。青い壁のかわいいおうちでした。
出稼ぎは、旦那さんを置いて4年だったかな。
家ができたから次は子ども!というわけで、ほどなく、おめでた。
人生設計ちゃんとしていて、スリランカの田舎の「しっかりものの女房」を絵に描いたような人でした。

もう1人は独身で出稼ぎに行って、私の駐在中に結婚。
もちろん職場の全員がお式に招かれたのですが、圧巻だったのは、嫁入り道具の列。
スリランカの木製家具って重厚ですごく立派なんですよね、そういう大きな箪笥を屈強な男たちが6人がかりで運び、それに続いて数々の家電、もちろん飛行機に乗せてきた冷蔵庫も、招待客全員が見守る中、パレードのように通りから家に運び込まれて行ったのでした。すべて彼女が稼いだお金で買ったのです。

出稼ぎしたことのなかったもう1人も、ずっとチャンスを狙っていました。
ただし、彼女が目指す先は中東ではなく、オーストラリアかカナダ。ほかの二人より教育レベルが高く(Aレベル修了、日本でいう高卒)、英語も日本語もいくらか話せる彼女は中東でハウスメイドになる気はなかったのです。
それに、西欧への出稼ぎは、中東に行くのと比べて、斡旋業者に払う料金も高いので、元々ある程度の経済力がないと目指すことができません。

いろんな人の「出稼ぎ」体験を聴くなかで見えてきたスリランカがあります。

もっと知りたい方にお勧めの本を別の記事で紹介しました。
『イスル・ソヤ—スリランカの海外出稼ぎ事情』内藤 俊雄 著
スリランカの人たちと友達づきあいをしたり、仕事をしたりしていく上で参考になる本を挙げるとしたら、迷わずベスト3に入れる、思い入れのある一冊です。

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